地域紹介_歴史･伝説

History歴史伝説

1300年以上の歴史を持つ温泉や文化、殺生石伝説などについてご紹介します

那須・甲子地域の歴史・伝説

温泉の発見とともに、湯治場として栄えてきた那須。そして、奥州と京の都、鎌倉、江戸などを結ぶ拠点としても発展した那須。昔から多くの人びとが訪れ、関わりを持った那須には、その歴史とともにはぐくまれた独自の温泉文化やさまざまな伝説が残されています。歴史を紡いできた人びとの思いが、時を超えてあなたの心に語りかけてくるかもしれません。
- 殺生石（せっしょうせき）
  
  茶臼岳山麓、那須湯本温泉の上流の谷筋には、その一帯は硫黄ガスが漂い、大小の石が散らばる一角があります。その中でもひときわ大きく、しめ縄を結われた巨石が、「殺生石」です。
  「殺生石」は、九尾の狐伝説をはじめ、数々の伝説を今に残し、また文人も多く訪れており、平成２６年３月に国指定「奥の細道の名勝地」に指定されました。
  「殺生石」の周辺は、那須温泉神社や千体地蔵などのスポットをつなぐ散策用の木道が整備され、気軽に散策することができます。
- 九尾の狐伝説
  
  昔、美しい女性の姿に化身した金毛九尾の妖狐がいました。この妖狐はインドや中国で悪事を働こうとして失敗し、日本に逃げてきました。
  狐は玉藻の前という名の優雅な宮廷婦人を装い、鳥羽上皇（1103～1156）の宮廷に仕えました。狐は上皇の寵愛を得ておりましたが、陰陽師にその正体を明らかにされてしまったため、那須に逃げ込みました。長い戦いの後、上皇の軍は狐を討伐しましたが、狐は巨石に姿を変え、邪気と有害なガスを出し続けました。
  数世紀後、那須にやって来た僧侶の源翁（げんのう）和尚（1329～1400）が、石の呪いを解こうと、石に大きな金槌を振りおろし、3つに打ち砕きました。石片の1つは会津に、もう1つは備前に飛んで、最後の1つは那須に残りました。それ以来、狐の魂を鎮めるために、毎年5月に御神火祭と呼ばれる夜の儀式が行われています。たいまつを持った参加者たちが那須温泉神社から殺生石へと向かい、金毛の狐の面と白装束をまとった太鼓奏者が、焚き火の前で太鼓を叩きます。
  九尾の狐の物語は、能楽や歌舞伎でも上演され、有名になっています。
- 教傅地蔵
  
  1336年、教傅という僧侶がおり、現在の福島県蓮華寺の住職を務めていました。教傅は友人と一緒に那須温泉に行くことにしました。出発の朝、母親が教傅の旅支度をしないで朝食を作っていることに腹を立てた教傅は、母親を罵り、お膳を蹴り飛ばして出て行ってしまいました。那須での滞在中、教傅一行は殺生石を見に行くと、雷鳴が天地を揺るがし、大地から火災熱湯が噴出しました。連れの友人は逃げおおせましたが、母親に酷い仕打ちをしたことで天罰を受けた教傅は、火の海に落ちて亡くなったといいます。
  教傅のような親不孝をしないように願い、1720年に最初の教傅地蔵像（一番後ろ）が建てられ、人々が訪れるようになった。1975年には新しい像が建てられ、2つの小さな地蔵が隣り合っています。5月下旬に教傅の追悼式が行われています。
- 千体地蔵
  
  教傅地蔵の周囲には、千体地蔵が奉納されています。一つ一つの像は、旅先での事故や自然災害（教傅に降りかかった災難のような）に遭わないようにと願う、寄進者の祈りを表しています。最初の像は1978年に設置され、その数は年々奉納により増えています。地蔵像は、それぞれに異なる特徴と印相があり、顔は教傅の旧寺である蓮華寺に向けられています。
- 湯の花採取場
  
  殺生石周辺からは現在も温泉成分を含んだ高温の硫黄ガスが出ていますが、江戸時代（1603〜1868）には、ここの湯畑で、噴出口に茅をかぶせることで、効率よく湯の花を採取し、農民は米の代わりに「湯の花」を年貢として払っていました。
- 那須温泉神社
  
  「なすゆぜんじんじゃ」と読みます。那須地方に存在する８０社の総社であり、那須与一が屋島の合戦で矢を射貫き、心願成就の御礼の気持ちを込めて奉納した鳥居が現存します。
  また、境内には「生きる」と命名された樹齢８００年のミズナラの大樹、松尾芭蕉の句碑など、歴史や文化に触れられるみどころが多くあります。

那須温泉郷（なすおんせんきょう）

那須温泉郷は、那須高原周辺にある温泉群です。歴史は古く、那須温泉郷にある温泉神社は平安時代前期の書物にも名前が載っているほど。
人気も高く、江戸時代の温泉番付では、東日本の関脇（第2位）とされました。
なお、那須地域では、150以上の温泉が発見されていますが、これは茶臼岳の火山活動が続いていることを示しています。
那須温泉郷の代表的な8つの温泉をご紹介します。

那須温泉郷

1.那須湯本温泉

那須湯本温泉に関する最初の記録は738年にさかのぼります（温泉神社の伝承では630年）。ある狩人が不思議な白い鹿を追いかけていたところ、温泉に浸かり傷を癒す鹿を発見し、「鹿の湯」を見つけた、と言われています。源泉温度が76℃の硫黄泉で、糖尿病、神経痛、倦怠感、痔核に効果があると言われています。
2.大丸温泉

大丸温泉は1691年に発見されました。車で行ける温泉の中で最も奥まった標高の高い場所にあります。温泉は60℃で弱アルカリ性、婦人科や腸の病気に効果があると言われています。
3.弁天温泉

1840年に発見された弁天温泉は、弱アルカリ性で湯の温度は50℃。胃腸疾患、貧血、消化不良に効果的と言われています。那須温泉の湯ただれを治す「仕上げの湯」としても知られます。
4.北温泉

北温泉は1696年に発見されました。温度54℃の単純泉で、子供の病気、リウマチ、不妊症に良いと評判です。温泉には天狗の面が飾られ、天狗温泉とも呼ばれる。プールのように大きな露天風呂があります。温泉旅館の一部は江戸時代後期（1603〜1868年）に建てられたものです。
5.八幡温泉

八幡温泉（現在は休業中）は1890年に発見されました。この塩泉は65℃で、神経障害、心臓病、胃腸障害を助ける働きがあると言われています。5月中旬から6月上旬にかけ、20万本ものツツジが眺望できます。
6.高雄温泉

1860年に発見された高雄温泉は、35℃の弱酸性の硫黄温泉です。かつては山岳信仰の神聖な湯で、行者が身を清めるためだけに利用していました。皮膚疾患や慢性的尿路疾患の治療に役立つと言われています。
7.三斗小屋温泉

三斗小屋温泉は那須連山の山中、那須ロープウェイ山頂駅から茶臼山を越えた向こう側にあり、徒歩でしかたどり着けない場所にあり、1142年に発見された酸性温泉です。源泉温度が90℃で、神経障害、潰瘍、皮膚疾患の治療に効果があるとされています。
8.新那須温泉

かつては上記の7つの温泉が「那須七湯」と呼ばれていましたが、後に8つ目の温泉として加えられたのが新那須温泉であす。大丸温泉の源泉から汲み上げられ、1923年に開かれたこの地域で最も新しい温泉です。